1989年のBDO世界ダーツ選手権決勝は、ダーツ史上もっともドラマチックな戴冠劇の一つです。スコットランドのジョッキー・ウィルソンは禁煙のため試合中ずっとワインガムを噛み続け、対戦相手は1980年代ダーツ界を代表する存在エリック・ブリストウでした。この決勝は名勝負のスコアだけでなく、ダーツ史上もっとも語り継がれる一言も残しました。
5-0から5-4へ:ブリストウの猛追、ウィルソンは6-4で王座死守
決勝は1989年1月14日、イングランド・フリムリーグリーンの Lakeside Country Club で行われました。ウィルソンは開始から勢いに乗り、最初の5セットを連取して5-0とリード。ところが5回世界王者ブリストウが5-4まで詰め寄り、逆転もあり得る展開になりました。最後はウィルソンが冷静さを保ち6-4で締めくくり、生涯2度目の世界タイトルを手にしました(1度目は1982年、ジョン・ロウ戦)。
禁煙の代償:試合中ずっとワインガムで集中力を保つ
この大会を前に、ウィルソンは禁煙を決意しました。それまで投げるたびにタバコで集中力を保っていた習慣をやめるということです。解決策はシンプルで、試合中ほぼ丸一日ワインガムを噛み続け、その動作で集中力をつなぎ止めました。この小さな癖は戴冠劇で最もよく語られる場面の一つになり、誰よりも正確に投げる一方で生活習慣は飾らない、そんな異色のチャンピオンぶりを物語っています。
「間抜けはブリストウただ一人」:3年前からのわだかまり
ウィルソンとブリストウのわだかまりは、実は1989年より前から始まっていました。1986年、ブリストウは MFI World Matchplay で格下のスティーブ・ブレナンに番狂わせで敗れた後、メディアに「自分はいつも wallies(間抜けたち)に負けている」とこぼしました。この発言はウィルソンの耳にも届き、彼はこう切り返しました。「この世に wally(間抜け)は一人しかいない。それはエリック・ブリストウで、今は家にいる」(There's only one wally, that's Eric Bristow, and he's at home now)。3年後、2人は世界選手権決勝で正面から対決することになり、この一言が二人の因縁にふさわしい締めくくりとなりました。
表彰式では自分の入れ歯までネタにする
ウィルソンは若い頃まったく歯を磨かず、28歳で最後の歯を失い、以来入れ歯で過ごしていました。1982年の初優勝後、1,200ポンドで新しい入れ歯を作ったものの、酒を飲むとゲップが出やすいとこぼしていたそうです。1989年の表彰式でも、その入れ歯をネタに自ら笑いを取り会場を沸かせました。この飾らないユーモアも「庶民のチャンピオン」と呼ばれた理由の一つです。
エリック・ブリストウとは:The Crafty Cockney、フィル・テイラーの発掘者
ブリストウは1980年代ダーツ界を象徴する存在で、愛称はThe Crafty Cockney。BDO世界選手権5回制覇(1980、1981、1984、1985、1986年)、世界ランキング1位にも長く君臨しました。フィル・テイラーの発掘者でもあり、1985年に陶器工場勤めだったテイラーを自分のパブで見出し、資金を出してプロ転向を後押ししたことが、史上16回優勝という伝説につながりました。「電力」本人の物語はフィル・テイラーとはで詳しく読めます。
禁煙のワインガム、表彰式の入れ歯ネタ、そして30年以上語り継がれる一言——この決勝は、ダーツで問われるのは精度だけでなく個性でもあることを教えてくれます。決勝セットの緊張感を味わいたいなら、AI DARTS の台は24時間セルフサービス、来る前にメニューをチェック。記録を残したいなら会員システムもどうぞ。