「PPDいくつ?」「MPR3超えてる?」ってよく聞かれるけど、その数字が何をどう計算したものか、上げるには何を練習すればいいのか、ちゃんと説明できる人は意外と少ない。この記事では PPD・MPR の計算式から Phoenix 台の RATING への換算まで、途中で実際にソースを確認できたプロ選手の練習法も紹介する——硬式の Michael van Gerwen や Luke Littler、それとソフト/DARTSLIVE系の日本人選手まで。確認できたことだけ書く、わからないことは「わからない」と正直に書く。
PPD・MPRの正しい計算式
PPD(Points Per Dart、1本あたりの平均得点):総得点 ÷ 投げた本数。公式な定義はアメリカの NDA(National Dart Association)とその機台パートナー Arachnid のハンディキャップ文書にある。例:12本目で301ゲームに勝った場合、PPD = 301 ÷ 12 = 25.08。MPR(Marks Per Round、1ラウンドあたりのマーク数)はCricket用で、(総マーク数 ÷ 投げた本数)× 3。例:46本で59マークなら、MPR = 59 ÷ 46 × 3 = 3.85。
よくある誤解も正しておきたい。「PPD/MPRはADOの公式定義」とするネット記事が多いが、American Darts Organization の公式文書にはこの2語は一度も出てこない。実際は 1986年設立のNDAが、電子ダーツ機台のArachnidと一緒に、レベル差のあるプレイヤー同士を公平にハンディキャップするために作ったもので、それ以前にNDAが使っていたもっと複雑な加重評価方式を置き換えたものだ。
PPD × 3 は硬式でよく聞く「3-dart average」と同じなのかもよく聞かれる。計算式自体は同じ(総得点 ÷ 本数、必要に応じて×3)だが、この2つのシステムは別々に発展してきたもの:アメリカのPPD/MPRはソフトダーツのバーリーグのハンディキャップ用、3-dart averageは英国式硬式のテレビ中継用。バーストや試合が早く終わった場合の本数の数え方について、両者を公式に対応づけた資料はない。「考え方も式も同じだが、別々のシステム」というのが正確な言い方になる。
アマチュアからプロまで、だいたいどのくらいの数字か
公式な数字は少ない:NDAの2021年公式トーナメントハンドブックではMasterの基準は35 PPD、3.8 MPR(2019年改訂)。一方、NDA系列団体IAMOAの2012年の文書では29 PPD、3.4 MPR。この差は基準が年々上がっている可能性を示すが、文書自体にその理由の説明はない。ネットでよく見る「初心者30-40、アマチュア40-60、プロ80以上」のような区分は公式な出典が見つからず、あくまで経験則として扱うべきものだ。
実際の大会データの方が参考になる:2011年ワールドマッチプレイで優勝したPhil Taylorの大会通算平均は105.49。2016年、Michael van GerwenはMichael Smith戦でテレビ中継史上最高の123.40を記録。2024年にはGary Andersonが自己ベストの123.83を出した。PPDに換算するとおよそ31.7〜35、記録的な試合では41を超えることもある。
AI DARTSのPhoenix台、PPD/MPRからRATINGへの換算
Phoenixが公開しているのは完全な計算式ではなく「区間対応表」:Rating 1(01 GAME PPD 0〜10.64)、Rating 10(PPD 20.75〜22.04、MPR 2.21〜2.35)、Rating 30(PPD 48〜60、MPR 6〜9)。対応する12段階のクラスは N → C → CC → CCC → B → BB → BBB → A → AA → AAA → Master → Grand Master、詳しくはダーツ用語まとめを。DARTSLIVEのレーティングは確定するタイミングが違う(01ゲームはその試合の必要得点の80%に達した時点、Cricketは6ナンバーをオープンした時点で確定)ので、Phoenixとは単純比較できない。両方の台を打つ人には、Recodartsというサードパーティ製アプリがDARTSLIVEとPhoenixの両フォーマットを相互換算できる、珍しいツールだ。
自分の伸びをどう記録するか
手動で記録するのが一番シンプル:練習ごとに総得点と投げた本数を書き留めて自分でPPDを計算し、長期的にグラフ化する。自動記録には実在するツールがいくつかある:DartConnect(PDC公式の計分システムで、個人向けのMy DartConnectで試合履歴やトレンドを確認できる)、n01(日本製の手動計分補助アプリ、難易度別のCPU対戦やCSV書き出しに対応)、My Dart Training(複数のプロフィールを作って違うダーツセットでの成績を比較できる)、DartCounter(世界300万人以上が使うとされ、前9本平均やダブル命中率を記録)。前述の Recodarts はDARTSLIVEとPhoenixの両方を換算できる唯一のアプリ。
本当に効果のある練習法
Around the Clock:1から20まで順番に投げ、その数字のどこかに当たれば次へ進む。「1周するのに何本かかったか」を記録し、その本数を減らしていくのが目標。Bob's 27(元世界チャンピオンBob Anderson考案):27点スタートで、D1からD20、最後にブルまで順番に狙う(全21ラウンド)。命中すればそのダブルの点数を加算、外せば減算。満点は1437点で、400点以上で優秀、600点以上で非常に優秀とされる。170フィニッシュ(T20+T20+ブル):コーチは「T20を連続で当てる」練習と「ブルだけ」の練習を分けてから合わせることを勧めている。実戦でよく出るフィニッシュは60〜100点台に集中していて、170ばかり練習するのは本末転倒だという指摘も重要。Doubles Rotation:D20、D16、D10、D8、D12を各3本ずつ(計15本)投げ、8本以上命中で合格ライン。121チェックアウトゲーム:121点からスタートし、3ラウンド以内にフィニッシュできたら目標を1点ずつ上げていき、失敗したら121に戻る。これはMichael van Gerwen自身のお気に入りの練習ゲームでもある。
硬式のプロ選手たちの本音:練習量は想像と違う
Michael van Gerwenは配信で「Zero. I never used to practise(ゼロだよ、昔は練習なんてしてなかった)」と告白している。試合数が十分にあったので、試合そのものが練習になっていたからだ。調子が悪い時だけ「練習ボードに戻る」といい、大会前はだいたい2〜2.5時間練習する。Luke Littlerは夜型で、深夜2〜3時まで起きていて、午後1〜2時に起床。練習時間は「maybe 20 minutes or half an hour just to keep my arm loose(腕の感覚を保つだけの20〜30分程度)」だといい、「もう馬鹿みたいな時間練習する必要はない」と語っている。Gary Andersonは「I'm one of the world's worst for practice(自分は世界一練習が嫌いな選手のひとりだ)」と正直に認めている。Peter Wrightは「1日1時間から12時間まで幅がある」と言いつつ、「練習しすぎて分析しすぎると、うまくいかない時に頭がおかしくなる」とも語っている。
Gerwyn Priceはコロナ禍の試合中断期間に練習量が明らかに増え、特にダブルへの命中を重点的に練習していたと語っている。Phil Taylorについて確認できた本人の発言は「I do a lot of practicing. I'll still go and have a little practice on Christmas day(かなり練習する。クリスマスでも少しは練習に行く)」のみ。ネットでよく見る「1日11時間」「8時間を20分ずつに分割」といった話は、いずれも本人への一次取材までは辿れず、伝聞や掲示板の書き込みが出所だったため、事実としては扱わない。
日本のソフトダーツ選手の練習法
アジア人初のレイクサイドBDO世界チャンピオン鈴木未来は、日中の空いた時間に1日2時間×2〜3回、カウントアップ中心に練習し「毎日手の感触を思い出すために投げている」という。浅田斉吾はプロになる前、1日10時間投げ続けていたが、有名になった今は「『練習するための練習』はしないようにしている」と語り、練習時間は不規則になり、試合やレッスンで感覚を維持しているという。山田勇樹はイギリスで教わった具体的な練習法を紹介している:121から170まで3ラウンド以内で上がる練習で、上がれなければ5つ数字を戻る。「3ラウンド以内」という制約が、決まったパターンの丸暗記ではなく色々な数字の組み合わせを練習させる肝だという。「20トリプルばかり狙う練習はトップ選手はやらない」と忠告されたこともあると明かしている。村松治樹は「質より量」を主張する:集中した1時間より、何も考えない5時間の方が体が動きを覚えるという考え方だ。岡野翔は1日5時間の練習と30分〜1時間の勉強という時間管理術を公開している一方で、具体的な練習メニューについては「知りたければライブ配信に来て聞いてほしい」と明言し、あえて公開していない。この「あえて公開しない」という姿勢自体も、正直に書くべき事実のひとつだ。
どれだけ練習すべきかは人によって答えが違う——MVGは全盛期にほぼ練習ゼロ、Littlerは1日20分、浅田斉吾はプロになる前は1日10時間。唯一の正解はない。「何時間練習したか」よりも身につける価値があるのは、自分のPPD/MPRの推移を追う習慣だ。AI DARTSのPhoenix台は自動で記録し、RATINGに換算してくれる。セルフサービスの始め方はこちら、用語やルールをおさらいしたいならダーツ用語まとめとクリケットと501の遊び方もどうぞ。不調や装備変更のときの調整法はこちら。メニューはこちら。