ダーツの試合で選手が紹介されるとき、MC が必ず叫ぶのがダーツ選手の愛称(ニックネーム)です。The Power、Snakebite、The Nuke。どれもかっこいい響きですが、由来は意外と適当だったりします。CD ケースを踏んだから、子牛のお産を手伝っていたから、ただ韻を踏むから。この記事では16人の愛称の由来をまとめました。どの段落から読んでも大丈夫です。
ダーツ選手にはなぜ愛称があるのか
愛称はダーツ選手の看板です。ユニフォームにプリントされ、入場のときに MC にコールされ、観客が選手を覚えるいちばんの近道にもなります。選手の入場曲と合わせて、ステージ上のキャラクターを作るものです。とはいえ何でも名乗れるわけではありません。PDC は下品・不適切な愛称を禁止でき、2023年の Owen Bates「The Master」、2025年末のオーストラリアの Tim Pusey「The Magnet」は、どちらも名字と続けると下品なダジャレになるため使用禁止になりました。
Phil Taylor「The Power」:CD ケースを踏んだ
世界選手権16回優勝の Phil Taylor の愛称は、実力とはまったく関係ありません。1995年の World Matchplay 期間中、Sky Sports の制作マネージャー Peter Judge が「彼にはインパクトのある名前が必要だ」と考えていたところ、Snap! の曲「The Power」の空の CD ケースを踏んだと伝えられています。名前はそのまま決まり、この曲が入場曲にもなりました。それ以前は Eric Bristow の弟子だったことから「The Crafty Potter」と呼ばれていました。詳しくはPhil Taylor とはで。
Michael van Gerwen「Mighty Mike」:家族がつけた名前
MVG の「Mighty Mike」は家族がつけたもの。2023年の世界選手権で新スポンサーが「この愛称は退屈すぎる」として「The Wizard」に変えようと冗談を言ったとき、本人は家族がくれた名前だと返し、しかも The Wizard はすでに Simon Whitlock の愛称でした。結局これは広告の仕掛けだったと判明しています。トレードマークの蛍光グリーンのシャツから「The Green Machine」という別名もあります。詳しくはMVG とはで。
Peter Wright「Snakebite」:あのお酒とは無関係
イギリスには Snakebite というお酒(サイダーとビールを混ぜたもの)もありますが、Peter Wright の愛称はそれとは関係ありません。2020年に世界王者になったあと、本人はこう説明しています。「単純に蛇が好きなんだ。自分は蛇に似ていて、静かで放っておかれたいタイプ。でもしつこくつつかれたら噛みつくよ」。ステージ上のモヒカンとフェイスペイントは派手ですが、素顔はかなりシャイです。
Michael Smith「Bully Boy」:子どもの頃、農場で子牛のお産を手伝った
Bully はブル(ブルズアイ)のことだと思われがちですが、違います。Michael Smith は子どもの頃に農場の手伝いをしていて、生まれたばかりの子牛を押さえてお産を手伝う役でした。農場の人たちに「a bully」と呼ばれたのが「Bully Boy」の始まりです。今もチェシャーの農場に住んでいます。
Luke Littler「The Nuke」:ただ韻を踏むから
史上最年少の世界王者の愛称は、破壊力を表しているように聞こえますが、実はそこまで深くありません。Littler によると13、14歳の頃、父親とパブで愛称を考えていて「Luke the Nuke がすぐ出てきた。明らかに韻を踏むから」。詳しくはLuke Littler とはで。
Luke Humphries「Cool Hand Luke」:試合で勝ち取った名前
由来は1967年の同名映画『暴力脱獄』(原題 Cool Hand Luke)。プレッシャーのかかるダーツのステージにぴったりです。面白いのは、危うくこの名前を手にできなかったこと。当時「Cool Hand Luke」を名乗っていたのは Martin Lukeman で、Humphries は「Cool Man Luke」。2人は Challenge Tour で対戦したとき、勝ったほうがこの名前をもらうと約束しました。名前は Humphries のものになり、Lukeman はのちに「Smash」に改名。Littler との対決は2人の Luke のライバル物語で。
Gerwyn Price「The Iceman」:友達いわく「Price と韻を踏むから」
元ラグビー選手の Gerwyn Price は、もともと愛称がありませんでした。友達が「The Iceman」を勧めた理由は、Price と韻を踏むし、入場曲「Ice Ice Baby」にも合うから。冷静そうな名前ですが、本人はステージで最も感情を爆発させる選手のひとり。そのギャップも見どころです。
Nathan Aspinall「The Asp」:名字の頭文字、しかも毒蛇
「Asp」は Aspinall の最初の3文字で、英語では毒蛇の一種の名前でもあります。シンプルで覚えやすく、殺気もある。名字から作る愛称のお手本です。
Rob Cross「Voltage」:元電気工事士
Rob Cross はプロになる前は電気工事士だったので「Voltage(電圧)」。2018年、キャリア初出場の世界選手権でいきなり優勝し、決勝では Phil Taylor を破りました。本業が愛称になるのはダーツ界ではよくある話ですが、その後の実績とここまでギャップがある人はなかなかいません。詳しくはRob Cross とはで。
Jonny Clayton「The Ferret」:ラグビーでボールを掘り出す役
「The Ferret(フェレット)」は若い頃のラグビーのポジションから。スクラムハーフは密集からボールを掘り出す役なので、チームメイトにフェレットと呼ばれていました。ウェールズ出身の彼がトップレベルに定着したのは40代になってから。2021年、初出場の Premier League で優勝しています。
James Wade「The Machine」:Sky Sports がつけた
James Wade の愛称は Sky Sports がつけたもの。本人いわく「投げ方が機械みたいだと言われた。すごく、えーと、機械的だって」。機械のように再現性の高いフォームは、ダーツ選手にとっては褒め言葉です。
Danny Noppert「The Freeze」:性格と出身地のダブルミーニング
オランダの Danny Noppert の「The Freeze」は掛け言葉です。ステージで冷静に表情を崩さない様子を表すと同時に、出身地のオランダ・フリースラント州(Friesland)の発音が Freeze に近いからです。
日本・アジアの選手の愛称
PDC の舞台に立つアジアの選手にも、それぞれ英語の愛称があります。由来がはっきりしているものもあれば、本人が説明していないものもあるので、ここでは正直に分けて書きます。
鈴木未来「The Miracle」
BDO 女子世界選手権を2連覇した鈴木未来の英語の愛称は「The Miracle」。本人による由来の説明は見つかりませんでしたが、「ミクル」と「ミラクル」は一音違い。しかも2019年の初出場で1セットも落とさず優勝しているので、これ以上ぴったりな名前もありません。詳しくは鈴木未来とはで。
浅田斉吾「The Ninja」
大阪出身で長く日本ランキング1位だった浅田斉吾は、PDC の舞台では「The Ninja」。入場曲は ONE OK ROCK の「The Beginning」です。由来についての本人の説明は今のところ見つかっていませんが、ヨーロッパの観客にとって、忍者はいちばんわかりやすい日本のイメージなのでしょう。
酒井素「The Creature」
2026年の世界選手権で踊りながらの入場が大バズりした酒井素の愛称は「The Creature(生き物、怪物)」。こちらも正式な由来は見つかっていませんが、ステージでの表情とダンスを見れば、なんとなく納得できるはずです。詳しくは酒井素とはで。
Paul Lim「The Singapore Slinger」
シンガポールのレジェンド Paul Lim は「The Singapore Slinger」。slinger は「投げる人」で、有名なカクテル、シンガポール・スリングも連想させます。1990年の世界選手権で史上初の世界選手権9ダーツを達成し、71歳でも PDC 世界選手権で勝利を挙げました。詳しくはマレーシア・台湾・香港のダーツ選手紹介で。
愛称の4つのパターン:あなたならどれにする?
- 韻・語呂合わせ:The Nuke、The Iceman、The Freeze
- 本業・経歴:Voltage、Bully Boy、The Ferret
- 性格・スタイル:Snakebite、The Machine、Cool Hand Luke
- 偶然:The Power。CD ケース1枚で一生の名前が決まった
AI DARTS では、世界選手権に出なくても自分の肩書きが持てます。会員システムには7つの職業(クラス)があり、Phoenix の台で投げた成績も会員システムに記録されます。まずは自分の愛称を考えてから、1ゲーム投げに来てください。